鮮

HUBANICETRIP FOODマップ

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FOOD

郷土料理のある街は幸せだ。風景や言語だけでなく、味覚の中にもアイデンティティがあるのだから。旅の醍醐味のひとつは、そんな土地の味をいただき、その土地の物語に思いを馳せることにある。さて、伊豆半島は郷土料理の宝庫だ。東西南中、それぞれの土地で“ならでは”の食と出会うことができる。それらは食材もジャンルもさまざまだが、共通していることがある。驚くほど新鮮、ということだ。

度

1

はんばた市場 水揚げの様子

密集、大量、力感。
駿河湾の恵みは
季節によって
多種多様だ。
はんばた市場 西伊豆町

まず熱海を出て、西に向かってみよう。西伊豆町の海沿いにある「はんばた市場」、そこでは毎朝漁師たちが獲った魚を水揚げしては、その場で締める。この日、魚を締めていたのは市場の20代の女性。よどみのない手さばきで、白い肌が鮮血に染まっていく。そうして店に並ぶ切り身たちは、驚くことになおバタバタと動き、包装を突き破ってしまいそうなほどだ。それらを吟味して、近所の方々がこともなげに買い物かごに入れていく。命が、すぐそばにある。これが、伊豆の日常なのだ。

極

はんばた市場 西伊豆町

はんばた市場
西伊豆町

はんばた市場 西伊豆町

穏やかな漁港の日常。
朝、漁師たちが次々と
帰ってくる。仁科漁港
西伊豆町

はんばた市場 西伊豆町

はんばた市場
西伊豆町

はんばた市場 西伊豆町

はんばた市場
西伊豆町

はんばた市場 西伊豆町

水揚げされた魚は
その場で締められ、
鮮度を失わず店に並ぶ。はんばた市場
西伊豆町

しおかつおうどん

昭和40年創業。
郷土料理だけでなく、
斬新な一品も提供する
大衆食堂。
喜久屋食堂 西伊豆町

キンメダイをはじめ黒むつ、サワラ、イカ……伊豆に行けば、必ず旬の魚を、旬の状態でいただけるだろう。それだけではない。それを活かした唯一無二の珍しい加工品や料理がいくつもある。そのひとつが、「しおかつお」。鰹を塩に漬け込み乾燥させたもので、今では西伊豆でしかつくられておらず、神事にも使われるほどこの地域の風土に欠かせない一品となっている。

ま

しおかつをや鰹醤油や鰹の塩辛を製造する様子

しおかつお
だけでなく、
鰹醤油や鰹の
塩辛を
昔ながらの
手法で製造する。
田子丸 西伊豆

しおかつおを細かくしてふりかけにし、ネギやのりなどと一緒にいただく「しおかつおうどん」はまさにこの土地ならではの郷土料理。シンプルなだけに、しおかつおの風味をよく感じることができる。あるいは同じ地域でつくられている「鰹の魚醤油」「鰹の塩辛」。使われるのは鰹の内蔵と塩のみ、やり方は伝統の手作業。何年も熟成して生まれる味わいは、旨い、のはもちろん、強い。

る

2

わさび園かどやのわさび丼

かつおぶし、わさび、
醤油という
シンプルな
わさび丼だが、
わさびの奥深さを
知ることができる。
わさび園かどや 河津町

熟成に向き合う「忍耐」は、伊豆半島の食の特徴のひとつだ。中伊豆へ移動してみよう。天城山の湧き水で育てられたわさびが有名だが、名所・河津七滝のそばに佇む「かどや」は、わさび農家が営む飲食店。採れたてのわさびを贅沢にすり下ろしていただく「生わさび丼」が名物で、香り鮮烈、色合い明瞭、風味は衝撃的に神経にクる。と同時に、脳にはびこる疲れやノイズがクリアになる感がある。古くから薬草として使われていたわさびの、本領発揮だ。ご主人曰く、「わさびは史上最強のハーブ」。この風味も、通常に出回るわさびの倍以上の時間をかけて自然と付き合いながら栽培しているがゆえ。

わさび園かどや 河津町

わさびの栽培には
清らかな水が不可欠。
天城山の湧き水は、条件を
完璧に兼ね揃えている。わさび沢
河津町

わさび園かどや 河津町

わさび園かどや
河津町

わさび園かどや 河津町

わさび園かどや
河津町

わさび園かどや 河津町

わさび園かどや
河津町

わさび園かどや 河津町

わさび園かどや
河津町

わさび

わさびは天城山水系
からの
清流で
育まれる。
わさび園かどや 河津町

ちなみに、ご主人はわさびの価値向上のために、さまざまなチャレンジや啓蒙を行う業界のイノベーターだ。「なぜ、わさびが蕎麦につけられているのか」「なぜ、中伊豆でわさび生産が行われるようになったのか」――およそわさびに関する「なぜ」は、彼が答えてくれる(きっとわさびの葉を切り落としながら)。彼のように道を極める者が、山間や海沿いの町にたくさんいて、プロとして日々粛々と食と向き合っているのだ。そこに、喧伝や承認欲求のかけらもない。ひたすらまっすぐ。その姿勢自体が、気持ち良い。

わさび園かどや

「わさび漬け」や
「岩のりわさび」
などの
おみやげも
充実している。
わさび園かどや 河津町

風光明媚な「筏場のわさび田」(伊豆市)や、浄蓮の滝のすぐそばに生い茂るわさび田(伊豆市)、ファミリー向けには「伊豆わさびミュージアム」(函南町)など伊豆半島にはいくつものわさび名所が存在している。澄んだ空気と清流、そして多様な生物が息づく環境にいるだけでも気持ちいい。一種のマインドフルネス/アクティビティとしてわさび体験を捉えてみると、伊豆旅の可能性はまた広がる。

3

オマール海老の茶碗蒸し

「オマール海老の
茶碗蒸し」。
目と
舌を喜ばせてくれる
メニューが次々に。
マルノワ 熱海市

熱海にも、食のプロがたくさんいる。その一人、シェフ・田中雄基。熱海で生まれ、都内で人気バルを営んだあと帰郷し、2021年に熱海は渚町で「marunowa(マルノワ)」をオープン。するや否や、あっという間に予約をとりづらい人気店になった。その理由は、熱海や伊豆産の食材を多く使った創作料理(シェフ自ら漁に同行することも!)をはじめ、熱海の陶芸家による器、雑然としつつも居心地の良い空間など、すべて高い質にあるからだが、なんといっても店にいると肌で感じる「熱海感」がすごい。

マルノワ 熱海市

マルノワ
熱海市

マルノワ 熱海市

マルノワ
熱海市

マルノワ 熱海市

マルノワ
熱海市

田中シェフ

故郷で腕を振るう
田中シェフは、
すでにローカルで
知らぬものはいない
存在に。
マルノワ 熱海市

ここでいう熱海は、観光客にとってのそれではなく、ローカルにとっての「おらが町」としてだ。つまり、にぎやかで、人々はオープンマインド、肩の力がぬけていて打ち解けやすく、食はうまい。都会的な洗練よりも下町的な親しみを尊び、とはいえ港町ならではの先進性もしっかりある。マルノワは、場そのものが郷土料理といっていい。 ただ、最後に残念なお知らせを伝えたい。ローカルをなによりも大事にするマルノワは、観光客おことわり。1日や2日では入れないかもしれない。だけれども、熱海を深く知り、伊豆に広く交わった72時間後であれば、きっとドアは開くだろう。

マルノワの料理

風味はもちろん、
器と調和した
美しい彩りも
堪能したい
マルノワ 熱海市

マルノワ以外にも、熱海の食のニューウェーブは続々登場。近年では古き良き歓楽街・渚町に目立つ。路地裏のワインバル、地元干物店直営のダイニング、おしゃれなカフェ……。そんな店に移住者や熱海好きの若い層が集まり、街に新たな活気がうまれている。もちろん、老舗店も忘れてはならない。創業半世紀を超える飲食店やスナックが混在し、熱海らしい食のカオス感がなんとも楽しい。

HOT SPRING

FOOD

NATURE

FACILITY RECOMMENDATION

海・山・空につらなる邸宅

STAY

INFINITY

西熱海